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UKから来た男 [映像製作/映画/アニメ]

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 高校時代の世界史の教師には大変世話になった。教育熱心で、夏休みに浪人中の卒業生のために中国史集中講座を開いてくれたような先生だった。

 在学中、その先生は来日したイギリス人の友人を学校に連れてきた。「イギリスの文化や生活・歴史について色々話してもらえるよ」と。「ただし、日本語は話せないから英語でね」…おいおい。
 放課後、校内の一室に数人の生徒が集まった。多分、私以外のほとんどは英語を得意とする連中だったのではないかと思う。

 私はどうしても確認したいことがあったので、言葉の障壁など何のその、興味本位で参加。
 質問はただ一つ。

イギリス本国において、 『モンティ・パイソン』はどういう評価を受けているのか?

 そんなわけで、出てしまいました。
 『空飛ぶモンティ・パイソン“日本語吹替復活”DVD BOX』! 当然、ゲット。DVD7枚組。

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 『モンティ・パイソン(MONTY PYTHON'S FLYNG CIRCUS)』…1969年から放送されたイギリスBBCのコメディ番組で、日本では1976年に東京12チャンネル(現・テレビ東京)で『チャンネル泥棒! 快感ギャグ番組! 空飛ぶモンティ・パイソン』のタイトルで放送された。

 “周波数が合ってしまったら、その影響下からは一生逃れられない番組”とだけ言っておこう。それは日本語吹替版でも同じである…と言うより、あの吹替でなければここまでハマることはなかったと思う。

 中学二年が終わる春休み、級友たちと温泉旅行に行った。その時に旅館で観た番組の宣伝が全ての始まりだった。私を含めた4人全員が「これは、絶対に観なければならない番組である」と感じた。もともと気心が合ったメンバーであるからして、ギャグに対する周波数も近いものがあったのだろう。

 “パイソンズ”とも呼ばれるこの番組を自作自演したメンバー…グレアム・チャップマン、ジョン・クリーズ、エリック・アイドル、テリー・ジョーンズ、マイケル・ペイリン、テリー・ギリアム…が(アメリカ人であるテリー・ギリアムを除き)全員オックスフォードかケンブリッジ出身で医師だの弁護士だのの資格を持っている、とか、カウンターカルチャーの突出した傑作で文化の歴史を塗り替えた、とか、そんな話は後から聞いたことで、中学生の私は単に“めちゃめちゃ面白い番組”という認識しかなかった。

 これは、日本語吹替が優れていたからであろうと思う。

 グレアム・チャップマン…山田康雄
 ジョン・クリーズ…納谷悟朗
 エリック・アイドル…広川太一郎
 テリー・ジョーンズ…飯塚昭三
 マイケル・ペイリン…青野武
 テリー・ギリアム…古川登志夫

 えっとぉ…当時はグラハ ム・チャップマン、ジョン・クリー 、マイケル・ リンと表記してあったんだが、改名したのか?(違うってば!)

 ま、とにかく、『ウルトラセブン』の地球防衛軍ワシントン基地諜報員マービン・ウェップ(山田)と、ウルトラマンA本人(納谷)と、『ウルトラマン』のザラブ星人(青野)と、『ザ☆ウルトラマン』の宇宙悪魔バラドン星人(飯塚)と、『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』のウルトラマン(古川)が揃い踏みとゴージャスな面々…すいません、飯塚さんと古川さんについては今調べました。
 残念ながら広川さんはウルトラ関係のお仕事はなさっていなかったりするんだからして実に。
 なお、古川さんはジャンボーグAやファイアーマンのスーツアクターもやっていたらしい。

 し・か・も!

 山田×納谷コンビがルパン三世と銭形警部であることはご承知のことと思うが、古川・広川両氏もルパン三世の声を当てている(広川さんはパイロット版)…つまり、ルパンが3人もいるのである。だからどうした…それだけの話ですが。

 当然、日本語訳も優れていたのだと思う。
 オリジナルの内容は、イギリスでの時事ネタやら、『がきデカ』の“練馬変態クラブ”のようなご当地ネタといった、多くの日本人には理解しにくいものも多かったようである。それを日本の中学生でも笑えるセリフにアレンジしたわけであるからして。

080303fukikae.jpg

(↑これはテレビでのスケッチ(コント)の焼き直しで作られた劇場版『モンティ・パイソン・アンド・ナウ』
の吹替台本)

 が、やはり声を当てた役者の皆さんの力量が大きかったと感じる。キャスティングをした人もよくぞ!と思う。
 今回のBOXで、ジョン・クリーズの声は当初“初代マスオさん”の近石真介さんだったということを初めて知ったが、結果として納谷さんが見事にはまった。
 何しろ、オリジナルキャストが、権威主義的な軍人からそこいらのおばさん、偏執狂的な人物や気弱な市民、上流階級から暴走族…と色々な役を演じているのである。それを吹き替えでも再現しなければならない。芸域の広い…と言うか芸達者な方々でなければとても演じ切れなかったであろう。
 これがまた達人たちの声がピッタリはまるんですよ。

 その後、パイソンズは劇場映画にも着手。日本での上映も、字幕版もあったのかもしれないが、とにかく私は吹替版で観た。
 NHKなどで再放送されたものは全て字幕放送だったのではないかと思う。ビデオ化された際も一部を除き字幕であった。
 う〜ん…。やはり思春期にうけた吹替版のインパクトが大きく、私としては字幕だと物足りない。

 そこへ今回、ようやく吹替版の復活!
 そして、この吹替音源は、何と放送局などに残っていたものではなく、放送当時にファンが自宅の民生機で録画したものを使用しているとか。ファン、恐るべし!

 とにかく、お笑いファンで、一発ネタ芸人が溢れる最近のお笑いに辟易している方、是非ご覧ください。



 なお、私はコアなモンティ・パイソンファンではない。たまたま関連商品や資料の情報を得ると入手せずにはおれないというレベルである。
 
 こんなのもあります。

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 映画『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』のフィギュア。残念ながらテリー・ギリアムのフィギュアはゲットならず(T_T)。
 一緒に飾ってあるのは“スパム”の缶詰である。ネット社会の大迷惑“スパム・メール”の語源は、モンティ・パイソンのスケッチに端を発するとのこと。ご存知の方はご一緒に歌いましょう! ♪スパム スパム スパム スパム ラブ・スパ〜ム ワンダフル・スパ〜ム…

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(↑『THE FAIRLY INCOMPLETE & RATHER BADLY ILLUSTRATED MONTY PYTHON SONG BOOK』から『スパムの歌』のページ。要はモンティ・パイソンの“歌本”なのだが、歌詞や楽譜がとてもわかりづらく書かれている。)
 
 さて。冒頭のイギリス人は私の問いに何と答えたのか?
 「社会的な評価については様々。ただ、個々のレベルだと“好き”な人たちと“嫌い”な人たちに明確に二分することが出来る。私の母親は完全に“嫌い”派だった。私は…もちろん“好き”派です」
 そう、モンティ・パイソン研究の第一人者である須田泰成氏が『モンティ・パイソン大全』(洋泉社・1999)で指摘しているとおり、難しく考えることは無いのだ。面白いと思えば笑えばいい。

 なお、イギリス人との一問一答は、私の英語力では不可能で、結局、世界史の先生に通訳してもらった。
 …やっぱり日本語吹替が良いぃぃぃぃ〜〜〜〜〜んだよなぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜(←山田康雄さんの声で)

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マック&シュンカナ

まずい。
ウルトラだけに特化している最近のマックですが
お笑いはあんまりですが、コメディーはすきですので・・・
もちろん名前は知っていても、見たことがないのですが。

何だかちょっぴり気になるます。
NHKで以前にやっていた「ダーマ&グレッグ」や「こちらホゲホゲ法律事務所」
などは好んで見ていました。

多分、ビデオなんてないんだろうなぁ
by マック&シュンカナ (2008-03-03 21:02) 

studio7

>マック&シュンカナ様
 私はウルトラを筆頭とする特撮ヒーローとアニメと漫画とお笑いに育てられたようなもので…。

 『〜空飛ぶモンティ・パイソン』は、放送の半分が純粋なモンティ・パイソンで、半分は今野雄二さんをナビゲーターに前田美波里さんとかイデ隊員とかが感想を述べたりする構成でした。

 番組のラストはタモリのコーナーで、例の“四カ国語麻雀”などの芸を披露。おかげで、上記のように語学が全くダメな私ですが、デタラメなら数カ国語イケるようになりました。そういう意味でも私にとっては影響の大きい番組…。ま、結局こんなオトナになってしまったわけです。
by studio7 (2008-03-03 21:16) 

オビコ

 『モンティ・パイソン』
 名古屋では、この当時テレビ東京系~テレビ愛知が無い!
 しかし日テレ系~中京テレビでやっておりました。

 貴兄が書かれたので、これ以上書くことなど全く無いのだが、偏に吹き替え版でないと、この面白さは日本人には判らん。

 コレだけです。

 えにしんご~ん!えにしんだうん!魚もアヒルも九官鳥も~という歌詞だけ覚えておりますが、オカマの広川太一郎さんが印象的です。

 また広川さんといえば『謎の円盤UFO』のストレーカー司令官ですねぇ。

 落差が激しい・・・バットマンもあるか。マース スレートとかねぇ。

 タモさんと云うと、この元ねたの藤村有弘(字あっとったけ???)さんこと“バンサ”の謎の外国語・・・『~~バンサ!~バンサ!』という言葉が多く、インド系の言葉かも・・・デタラメですが・・・が、思い出されます。
by オビコ (2008-03-03 23:18) 

ケイパパ

モンティ・パイソンは見れば思い出すと思いますが、イマイチ覚えてない・・・。
それにしても、豪華声優陣ですね~。
台本まで持っているとは・・・。
古川登志夫さんがスーツアクターだったとはビックリです。
by ケイパパ (2008-03-03 23:33) 

オビコ

 ?ストレイカー司令官が正しいですよねぇ。
 とりあえず、どうしようか迷いますねぇ。最近1/700の宇宙戦艦ヤ○トの模型に惹かれてDVD-BOXを買ってしまっただけに・・・超金欠です。
by オビコ (2008-03-04 00:00) 

studio7

>オビコ様
 私の“ファースト広川”はバットマン、次が『チキチキマシン猛レース』のキザトトくんでした。「ミルクちゃんの言うことなら、僕、なんでも聞いちゃうんだもんね〜」と、あの頃から広川節が炸裂していたような…。
 個人的には(モンティ・パイソンを除くと)『ローマの休日』の美容師がど真ん中ストライクでした。

 タモさんの『今夜は最高!』に藤村さんがゲストで登場したことがありました。二人してイタリア映画のパロディをやっていましたが、デタラメのイタリア語はさすがに藤村さんの方がはるかに上手かったですね。ハタハッハ…。

 ヤマトのDVD BOX特典…あれ、庵野秀明監督が絡んでいるコダワリの逸品とか…。私はポピニカ魂で我慢です。
by studio7 (2008-03-04 02:09) 

studio7

>ケイパパ様
 テーマ曲となったスーザの『リバティ・ベル』を聴けばきっとテリー・ギリアムのアニメーションとともに記憶が蘇るかもしれませんよ!

 アフレコ台本は、『〜アンド・ナウ』の劇場公開の際、パンフと一緒にフツーに売られていたものなので、全然珍しいモノではありません。『〜ホーリー・グレイル』の時も売られていたと思います…買わなかったのを後悔しています。

 古川さんがスーツアクターだったことについては、今回Wikipediaで調べて初めて知った情報です。裏付け捜査をしておりませんので“〜らしい”という表現にとどめてあります(^^;


by studio7 (2008-03-04 02:17) 

オビコ

 バンサの回の『今夜は最高!』は観た覚えがあります。
 バンサといえば、ドン ガバチョですねぇ。
 『みなさ~~~ん』です。

 やはり“芸”人の時代でしたねぇ。

 1/700は委託製作を考えていますが、艦船扱いだと、高いだろうなぁ。
by オビコ (2008-03-04 22:51) 

studio7

>オビコ様
 本当に“芸”人が少なくなりましたね…。個人的には、友近や柳原可奈子はまあ、芸がある方だと思うのですが。
 腹話術のいっこく堂はもの凄い“芸”を持っているものの、技術に走りすぎて肝心のエンターテインメント性がいまいちだと感じました。が、以前は不可能とされていた“マミムメモ・パピプペポ・バビブベボ”といった発音が「出来る」ということを世に知らしめた影響は強いです。…私も散々練習しちゃいましたw

 声優さん…まあ、そもそもは俳優さんですが、我々が見ていた時代にメインで活躍していた皆さんはやはり“芸”がありましたね。もう、どんな役でも自由自在といった感じで…。高橋和枝さんは少年声が多いですが、『アイ・ラブ・ルーシー』のルシール・ボールの吹き替えでは、ちょいとズッコケた女性を見事に演じられたいましたっけ…「ビビア〜〜〜ン!」の叫びが耳についてます。

 ヤマト、立ち読みしたホビージャパンで艦船モデラーがディテールアップしてましたね〜。ただ「アニメのヤマト」のイメージからすると、???ですが。
 バンダイから出ているコスモゼロやブラックタイガーが、色々な注意書きデカール満載でガンプラ化しているのも、興味深く感じはしますが「ちょっとなあ…」という気もします。
by studio7 (2008-03-05 00:09) 

北島とめ吉

最後に「冒頭のイギリス人」が出来てホッとしました。
読みながらハラハラしていました。
by 北島とめ吉 (2008-03-06 01:52) 

studio7

>北島様

 読む者をして手に汗握らせるサスペンス記事の決定版!
 …って、そこにツッコミ入れられるとは思いませんでしたがな。

 パンチ・ライン(=オチ)を排除したモンティ・パイソンのギャグと異なり、私はオチに向かって流れを作るタイプですんで(^^;
by studio7 (2008-03-06 21:28) 

北島とめ吉

さすがは「話芸」のスタジオ7さんですね。
一瞬でも疑った事をお詫びいたします。

ところで、ウルトラマンもギャグの基本に忠実なんですね。

「すべっちゃったウルトラマン」
http://jp.youtube.com/watch?v=rwPZR4Crzlo



by 北島とめ吉 (2008-03-08 02:13) 

オビコ

 広川太一郎氏がお亡くなりになりました。
 あのオカマ言葉をもうお伺いすることが出来ません・・・

 謹んでお悔やみ申し上げます。
by オビコ (2008-03-08 20:35) 

studio7

>北島様
 我が家の旧MacだとYou Tube 観られないんです(T_T)
by studio7 (2008-03-08 21:10) 

studio7

>オビコ様
 まさにこの記事をアップした日に亡くなられたようです。
 残念でなりません。
by studio7 (2008-03-08 21:11) 

北島とめ吉

そうでしたか。
ちびっ子向けのイベントで颯爽と登場しようとして転ぶウルトラマンに会場から笑いがおこると云うビデオです。
パソコンを新調して見るほどのモノではありません。
by 北島とめ吉 (2008-03-09 01:35) 

studio7

>北島様
 ああ…。
 S.A.(サービスエリア、ではなく、スーツアクター)というのも大変なんですよね〜。ただでさえ小さい除き穴なのに目が光っているから視界は最悪。周辺の状況判断がしづらいんです。しかも、暑い! それでアクションをするんですから、もう、大変。炎天下のイベントで、気持ち悪くなってゲ(以下自粛)…という例もあるらしいです。
by studio7 (2008-03-09 19:38) 

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