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ウルトラ作戦第2号 Vol.8 [ウルトラ]

 実を言うと、この“ウルトラマン変身シーンパースフィギュア”の製作レポートはせいぜい5回くらいで終わると思っていた。これは己の造型技術を過信していたことによる誤った判断であった。今回で8回目。それでもまだ完成には程とおいのだ。

 難関の一つは顔の造型。
 本当に難しいのだ。極論を言ってしまえば、絵文字で「(o|o)」とか今回のポーズなら「○(%)o」とやってもウルトラマンに見えなくはない。それくらい簡単と言えば簡単な構造なのだ。私が神童(家庭内…またかよ)だった頃に描いた絵を見ても、ちゃんとウルトラマンに見える。

 だが、それらは…そうですね、例えば誰かの似顔絵を描く時のことを考えてもらいたい。そして、“絵”としてはそこそこの出来だったとする。ちゃんと“人間の顔”には見えるがその“モデルの顔”には似ていないと。そんな感じなのだ。要するに“ウルトラ一族の顔”だということはわかるが“初代ウルトラマン”に似せることは難しいということだ。

 ご存知の方には言うまでも無いし、ご存知でない方には全く興味の無い話だろうが、初代ウルトラマンには3種類の顔(マスク)がある。

 左から“Aタイプ”“Bタイプ”“Cタイプ”と呼ばれている。Aタイプは「パイロットエース」のリアルスタンダードソフビ、BタイプとCタイプは「BANDAI/バンダイ」の『ウルトラの星計画』のもの。

 最初に作られたAタイプは、ラテックスという軟質のゴム(怪獣の着ぐるみと同じ素材)で出来ており、さらに“口が開閉する”という前提だったらしい。その素材のせいでシワだらけだし、口の開閉ギミックが災いして回を追うに従って口元のラインが崩れていく。
 BタイプはAタイプと同じ原型からFRP樹脂という硬質の素材で作られた。極めて上品な顔つきで、この顔のファンも多い。
 最終形態がCタイプで、現在に至るまでの“ウルトラマンの原型”とも言うべき決定版である。力強さとアルカイックスマイルを湛えた独特の顔…そしてアングルや照明によって表情が異なって見える能面のようなマスクは、私も決定版だと感じる。

 いずれも造型はデザインを手がけた成田亨氏の後輩・佐々木明氏である。二人の彫刻家がこのかつて無いヒーローの顔を作り上げたのである。

 パースフィギュアについては上記のいずれの顔でも無いと思われるが、今回はCタイプの顔でいくことにした。私が好きだということももちろんあるが、以前ご紹介した『怪獣と美術』という展覧会に出展されていた成田亨氏によるウルトラマンのマスク(実際の製作は佐々木明氏だという話も聞いたが定かでない)がまさにCタイプの顔だったのだ。
 つまり、成田氏が目指していたウルトラマンの顔はCタイプであろうと推察できる。

 さて、目標が決まったので手を動かす。

 これが全てのスタート。輪郭と“とさか(鼻?)”と口が決まらないと、目と耳の位置も決まらないと思い、そのあたりから手をつけることにした。

 徐々に形になってきた。が! 最後の写真で鼻が曲がっていることに気づいたorz。で、作り直し。

 ついでに、鼻の上部を太く・高くして、顔にも強制遠近法を加えることにした。
 目は別パーツにするため、顔にセロテープを貼った上から造型。ヒートプレスを想定して、やや小さめに作る。
 途中、「あ、帰ってきたウルトラマンに似てる」とか「ビュースター版のウルトラマンに似てる」とか「この角度から見るとウルトラマン80みたい」とか「これじゃイナズマンじゃん」とか、そういうプロセスを経た。
 結果として、目が完成してからまた輪郭や口を作り直すことになる…口なんて何十回やり直したんだ?!

 アルカイックスマイルや能面云々といった高尚なレベルではない。“らしく見せる”だけで精一杯…。
 姑息な手段だが、左右の目の形や吊り上がり具合が違っている、といったディテールで誤魔化してみたりして。で、とりあえずサーフェイサーを吹き付けた…せっかくなので(何がだ?)顔はグレー、目は白のサフェを吹いてみました。

 これであとは塗装! …ではない。石粉粘土は脆いので、エッジが尖った部分などは簡単に欠けてしまう。ここからはパテでの成形&整形を行い、シャープなウルトラマンを目指すことになる。
 
 ま、何とか折り返し地点には達したのかな〜? (つづく)

【追記】
 この顔の作成にあたっては、書籍類の他に海洋堂の“メガソフビウルトラマンCタイプ”をずいぶんと参考にさせていただいた。細部に至るまで本物のウルトラマンスーツ&マスクの考証にこだわった傑作である。原型は木下隆志氏で、私はもう、木下原型のウルトラフィギュアなら中身を見ずとも買っちゃうくらいに信頼している。
 作品のテイストは異なるが、ビリケン商会のハマハヤオ氏による原型作品も同様。「宇宙獣神ゴード」…どうしよっかなあ…

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コメント 10

おーるい

顔は難しいですよね。
人型はどこも難しいですが。

ウルトラマンいいですね~
バランスもちゃんととれてるように感じます。

仕上げ頑張ってくださいませ~
by おーるい (2007-12-02 12:57) 

studio7

>おーるい様
 考えたら目のヒートプレスって、“内側”と“外側”を作って挟み込むようにしなきゃアカンかったんだよね〜。さーて、どうするか…。仕上げ作業は当分先になりそうです。
by studio7 (2007-12-02 13:06) 

オビコ

 拙宅にある会報にも載った。木下さんが制作したウルトラマン Cタイプですが(序に云うと、ラジオ会館の展示品も同じですが、間近で見ると、は~ぁと思うぐらい覗き穴の左右の穴の位置が違います。多少はデフォルメされているのかも知れませんが・・・
 まぁ、パースモデルですので覗き穴は必要ありませんがねぇ。
 
by オビコ (2007-12-02 15:27) 

おーるい

ウルトラマンの目>外側がクリスタルカットっぽくで良かったんでしたっけ?

丸形状でヒートプレスして、六角レンチでヒートモールドするってのは?
あ、原型にモールド付けてプレスしたほうが早いか。。
by おーるい (2007-12-02 18:15) 

北島とめ吉

今日たまたま日曜美術館のアートシーンのコーナーで「成田亨展」の紹介をやっていました。
ウルトラマンはもちろん、怪獣のデザインなどもとてもうつくしいですね。
今、気づいたんですがウルトラマンってブランクーシの彫刻に影響うけてるって話はないですか?
http://ilya-slow.img.jugem.jp/20061114_52982.jpg
by 北島とめ吉 (2007-12-03 01:20) 

studio7

>オビコ様
 実は、貴兄から「こんなモノ作りおって!」と怒られたらどうしようかとビクビクしておりました(大袈裟な…)。

 会報の写真は“ハイパーソフビ”ですね。我が家には中途半端に塗装したまま放置されているセブンが飾ってあります。
 木下氏は「覗き穴はズレてるんだよ〜」ということを強調したかったのではないかと勝手に推察。自分で難しさを体験して、原型師への尊敬が深まってしまったのでそう感じるのかも知れませんが。

 おっしゃる通り、拙作には覗き穴や手首足首の継ぎ目、耳のスイッチなど“本物のウルトラマン”には無いと思ったものは付けていません。京本政樹さんのような部分でのこだわりではなく、イメージ優先ですね。

>おーるい様
 どっちにしても、目は作り直しになりそうです。敢えて顔と目のパーツを分けた写真しかアップしなかったのは、そういう気持ちがあったからだったりします。
 あの目、正六角形のモールドではないみたいだし、まあ、それらしくなればいいやと思ってはいるんですけど。使えそうな透明素材を見つけたので、そっちを試してみます。顔ごと透明素材で複製した方が早いかも。
by studio7 (2007-12-03 02:10) 

studio7

>北島様

 「成田亨展」…足利でやっているヤツですかね? 基本的には私が三鷹で観たものと同じ内容ですが、足利の方が出展点数が多いみたいです。

 ご紹介いただいた画像、確かに似てますね〜。ただ、私が知る限り、ブランクーシの話って、成田氏の周辺からは出て来ないですね。四半世紀くらい下がってマリーニやファッツィーニには影響を受けたらしいですが、ウルトラマンや怪獣に関する限りはギリシャ哲学・彫刻だとか弥勒菩薩や阿修羅などの仏教美術といった言葉で語られています。
 キリコの名が出てきたりもしますが、それは単純さの例としてあげているだけで影響・着想にはつながっていないようです。

 …って、調べなきゃ答えらんね〜よっ! つか、知らないなら正直に「わからん」と言えよ、オレ!

 私の専門分野は、「ウルトラセブンの顔は、角度によっては松本幸四郎に似ている」とか「ウルトラマンの顔を広角で撮ると小日向文世みたいだなあ」とか、そのあたりです。
by studio7 (2007-12-03 02:58) 

NO NAME

>調べなきゃ答えらんね〜よっ!

調べとったんかい! 見栄はいけませんよ〜見栄は
でも面白かったです。思わず暖炉の前のロッキングチェアからずり落ちて、飲んでいたボルドーのシャトームートン・ロートシルト1986年ものをこぼしてしまいましたよ。

似ていると言えばこんなのがあいました。
http://blogs.yahoo.co.jp/kikkomax72/9568701.html 
by NO NAME (2007-12-05 01:15) 

北島とめ吉

↑北島でした〜
あいました→ありました
by 北島とめ吉 (2007-12-05 01:19) 

studio7

>ボルドーのシャトームートン・ロートシルト1986年もの
 先日はごちそうになりました…酔っぱらって北島邸の広間に下がっているクリスタルのシャンデリアをブランコにして遊んだり、貴重な中世古楽器コレクションで『ビューティフル・サンデー』を弾きながら玄関アプローチ前の噴水に飛び込んだり、執事の方にもご迷惑をおかけして申し訳ない…って、どんだけ金持ちだよっ!

どっ!!!!

…。

 すいません、ノリ突っ込み練習しときます。
by studio7 (2007-12-06 05:48) 

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